治療の過程で起こる合併症
絶望と急変
化学療法(抗がん剤治療)を始めて6か月目だったか、「二つ隣の個室の患者さんが、医者から『もうこの病院では治せない』といわれたそうよ」と、病室の清掃係りの方が教えてくれた。
私と同じ病気の方だ。しかも1年半もこんなつらい治療を続けて、挙句の果てに「治せない」と。あまりにも悲しすぎます。
また、こんなこともありました。
「他の個室に、今、移っていただけませんか」と看護師が、私の病室に入ってきた。
大部屋の患者さんで容体が急変した方がいて、この個室に移したいと。なんでもこの個室は、そういった場合に対応できる設備がある病室だそうで、容体が安定している私に普通の個室に移動してほしいということでした。
「わかりました」
私はすぐに承諾しました。私と同じ病気の方が急変したと聞いて、すぐに準備された部屋に移りました。
しかし、半日たっても、翌日になっても、私が空けた部屋に患者さんが入った様子はありません。
不思議に思い、そのことを看護師に聞いた。
すると、「ここでは対応できず、ICUに運ばれました」とのこと。
その患者さんが、病棟に戻ってくることはありませんでした。
肺炎と敗血症
その後、私も二度ほど合併症で、危険な状態になりました。
一度目は肺炎。
治療が始まって6カ月目にはいったころ、風邪をひいてしまった。
「まずいな」と思いましたが、もう遅かった。
抗がん剤で白血球が破壊され、抵抗力、免疫力がなく、まったくの無防備な体はみるみる体温が上がり、40.9度。失禁しました。
生まれてこのかた、こんな体温、経験ありません。しかも5日間も高熱が続いた。
「ああ、こうやって人は死んでいくんだなぁ」そう思いましたね。
二度目は敗血症。
8カ月目の治療が終わるころ、39.2度の高熱が出た。
検査すると、何らかの原因で血管の中に菌が入ったらしい。経路は特定できませんでした。
肺炎も敗血症も治療は点滴による抗生物質の投与になります。解熱剤も服用しますが、効き目は一時的ですぐに熱は上がってしまいます。
抗生物質の効き目が表れるまで数日かかる。その間、「死」というものに向かい合うことになりました。なにしろ40度以上の熱が続くわけですから。
頭で「死」を考えるんじゃないんです。体が「死」に近づいている感じがするんですね。「臨死」という言葉がありますけど、まさにこのことかなぁと。
私はどちらも奇跡的に回復することが出来ましたが、白血病はこのような合併症が命取りになります。
治療が始まって間もなくのころ、担当医に「白血病の治療をを拒否する患者っていますか?」と聞いたことがあった。すると、こんな答えが返ってきた。
「私の患者さんで薬剤師をなさっていた方なんですが、『治療は一切しなくていいです。50年間生きたので、それで充分です』と言って亡くなっていった方がいました」
医療の現場にいて、白血病の治療法、副作用を知っている方がその治療を拒否する。
白血病治療の現状を如実に物語っている出来事。胸が痛みます。
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