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2019年2月7日木曜日

剣道 片手刀法に魅了された少年時代 その1

二刀流 故松崎幹三郎先生 


「真の二刀流」の目撃者になった


 子供のころ所属していた剣道の道場に、二天一流の二刀を執る先生がいらっしゃいました。

 その先生が稽古をしているところを初めて見たのは、小学3年の時です。衝撃的でした。

 他の先生方はもちろん諸手で竹刀を振っている。その中でただ一人片手で竹刀を振り、両手に1本ずつ竹刀を持っている。しかも一方の竹刀は極端に短い。二刀流だ。
 足さばきは「歩み足」。右足が前でも左足が前でも打っている。一切下がることなし。打ち損じがほとんどない。振ったらすべて一本だ。
 圧倒的に強い。それでいてとても美しい。まるで踊りを踊っているようだ。

 あれから46年たった今もはっきり覚えているんですね。あの時の光景が脳裏にやきついている。足の指の動きまで。

 その二刀の先生は稽古に入る時、お相手に「一刀でやりますか?二刀でやりますか?」と聞く。お相手が「一刀で」と言ったら、竹刀を取り換えるために一旦下がる。一刀用の竹刀に持ち替えて、礼法から蹲踞、抜刀、そして構え……
 今度は右片手上段です。今ではお目にかかることのない片手上段。片手で構えて片手で打つ。竹刀を持たない方の腕は体側に下げたまま。片手で上段からすべての打突部位を見事にとらえる。応じ技も片手で応じて片手で打つ。その華麗さは、諸手上段の比ではありません。
 
 松崎先生は、大正生まれで、昭和初期の旧制中学の時に剣道を始め、その時の指導者が二刀者だったために初心者から片手刀法だけを習った方です。
 ですから、諸手一刀中段は習ったことがないのです。そういう方がいらっしゃたんですね。昔は。
 東京帝国大学卒で、人格的にもすばらしい先生でした。



 「大人になったら二刀をやりたい。片手刀法で試合に勝ちたい」



 その後、16歳の時に十二指腸潰瘍の悪化に伴う極度の貧血で、剣道をあきらめました。


 「もう剣道をやることはないだろう」


 それから30年後、あるきっかけであの衝撃がよみがえり、二刀で剣道界に復帰するとは……

 (そのきっかけとは、こちら