団体戦、壮年の部は3連覇
今回から秋季大会も「総合の決勝」を挙行
2016(平成28)年10月。浦安市秋季市民剣道大会に出場しました。この秋季大会は3人制の団体戦のみ開催されます。
この前年は、この大会で壮年の部連覇を達成しております。(平成27年大会の模様はこちら)
なお、今回は部門別のトーナメントだけでなく、その優勝者が「総合の決勝」を行なうことになったらしい。
春に開催される春季大会(こちらは個人戦のみ)では、総合の決勝が行なわれています。なので、以前から秋季大会の団体戦も「総合の決勝を」という声は上がっておりました。
今回、ようやくそれが実現したかたちになりました。
今回も同じメンバーで
メンバーは不動のおやじチーム。今回も、壮年の部に出場のチームの中で、平均段位が最も低いチームでした。笑
先鋒は40代半ばの逆二刀者。三段。
中堅は私でこの時52歳。正二刀。四段。
大将は還暦すぎたおじさんで一刀中段。三段。
私が声をかけて結成したチームですが、こんなに注目を浴びることになるとは思いませんでした。
この大会で、同一チームが連覇したのは初めてのことですし、メンバー一人ひとりが個人戦で優勝経験があるのですから。お相手にしてみれば、いやーなチームでしょうね。私だったらやりたくありません。笑
しかし、市内のライバル道場の皆さんは、今回もメンバーを組み替え、新チームを作って参戦してきている。気を引き締めなければなりません。
壮年の部
試合が始まって出だしは順調。
しかし、2回戦でちょっとヒヤリとしたことがありました。
その2回戦の私のお相手は、以前、春季大会の個人戦で対戦し、私が負けたことのあるお相手。今回はリベンジするチャンスと思い、試合に臨みました。
以前の対戦で負けた時は、大刀側の拳(こぶし)を打たれて一本を取られています。(拳は打突部位ではありませんので、厳密には誤審)
今回はそういう負け方はしたくないと思い、積極的に自分から攻めていった。そして、私が大刀で面にいったところを、お相手は竹刀で受けて胴を打ってきた。「面返し胴」です。
二刀者は大刀で面を打ちにいった場合、小刀が自分の胴の前にありますので、自然に胴を防御しているかたちになる。
この時も、お相手の胴打ちは、私の小刀に当たっただけ。しかし、その時の音が胴を打った音のように聞こえてしまったんですね、審判の方に。それで、一本になってしまった。今回も誤審……。
先鋒は勝っていますが、これで私が負ければ大将戦にもつれ込んでしまう。こんな負け方だけはしたくないと思い、急にあせり始めてしまった。
このお相手の方は、本当に隙がない。試合時間もあとわずかだと思われる。
このままでは、一本負けになると歩み足で思い切って攻め込んだ。
お相手の手元が上がったのが見えた時、そこをめがけて大刀を振り下ろしていました。
「小手あり」
審判の声が聞こえました。本当にホッとした。
その後すぐに試合時間の終了の合図があり、引き分け。
大将も引き分けて、チームは勝ち上がることができた。しかし、一歩間違えれば、危ない展開になるところでした。
その後もチームワークよく勝ち進み、決勝戦に。
この対戦も、先鋒の逆二刀者が勝ち。
私は、お相手を崩しきれず、機をつかめないまま引き分け。
大将も引き分けて、壮年の部の優勝を決めた。
今回は、私は引き分けが多かった。いまいち調子に乗れなかった感じ。振り返ってみれば、機を逃した場面が、多々あったと反省しきり。
しかし結果は、3連覇達成。本当にうれしかった。
総合の決勝
壮年の部3連覇の喜びもつかの間、総合の決勝が始まるとの場内アナウンスがあった。
前年までは、部門別のみの団体戦でしたが、この年は青年の部の優勝チームとの「総合の決勝」をやるという。
普通は嫌がると思います、おやじチームは。若い人とやってもどうせ負けるからやだ、って言うんじゃないでしょうか。
しかし、私たちおやじチームの先鋒と大将はやる気満々なんです。それを見て、私はおかしくて笑っちゃいました。まあ、私もやる気満々だったんですけどね。笑
対戦相手は、青年の部の決勝で、30代の強豪大学OBチームを破った現役大学生チーム。
この大会では、初めての試みである団体戦総合の決勝。会場にいる誰もが固唾をのんで、試合開始を待っています。
対戦チームのオーダーを見ると、先鋒に最も強い選手を据えている。勝ち点を先行させようとする作戦。3人制の団体戦ではよく使われる手法です。
一方、私たちおやじチームは単なる年齢順。そういった駆け引きはナシ。
試合が始まりました。
お相手チームは強豪校の現役剣道部員。瞬殺だけは避けたいところ。
会場にいる誰もが、青年の部優勝チーム優勢を疑わなかったのではないでしょうか。
先鋒戦。
足さばき、打突、身のこなし、何をとってもこれまでのお相手とは、速さが違う。
しかも、逆二刀を相手に防御も完璧。さすがに、現役選手は順応が早い。大刀側の小手を執拗に狙ってきている。
おやじチームの逆二刀者はよくしのいで、引き分けに持ち込んだ。
まずは、先鋒で勝ち点を先取するというお相手チームの思惑は、阻止することができた。
中堅戦。
ここで私が勝ち点を取って、優位に試合を進めたいところ。大将は、年齢差があり過ぎますから。大将に勝敗をゆだねる展開にはしたくない。
しかし、試合が始まってみると、お相手は私と勝負してこない。引き分けに持ち込んで、大将戦で決着させようという作戦です。
こういう戦い方は、壮年の部ではやる方はいません。やはり現役選手は勝ち負けにシビアですね。どん欲に総合優勝を狙ってる。
のらりくらりとかわすお相手を攻めきれず、引き分けになってしまった。
大将戦。
試合を見ているほとんどの人が、おやじチームには分がない、と思ったんじゃないでしょうか。
私もそう思いました。ああ、これで終わりだと。
しかしね、我がおやじチームの大将、打たれないんですよ。ホントに。
危ない場面は何度かありましたけど、負けないんですよ、打たれないから。
なんと、引き分けに持ち込んじゃった。
これは、観ていて驚きました。最低段位のおやじチームが、青年の部の優勝チーム相手に、代表戦ですって。
場内からは、歓声とどよめきが起こった。
代表戦。
試合を終えた大将が戻ってきて、代表に指名したのは私。
この日は、調子が今一つでしたが、そんなことは言っていられない状況。
お相手チームの代表は、思った通り先鋒の選手。
試合が始まりました。
代表戦は、一本勝負です。体力のことを考えれば、早く決着をつけたい。歩み足でどんどん攻め込みました。
お相手は、近間(ちかま)を嫌って間合いをとりたがっている。小刀で竹刀を押さえられるのを、警戒しているようだ。
お互いに決まり手がなく、試合時間は、10分を超えていたと思います。いつもなら、私はとっくに息が上がっているはずですが、この時は少しも疲れを感じません。
気迫は充実したまま。心は非常に冷静でした。
お相手とは、互いに「出ばな」を取り合って、相面になる場面が何度もあった。
「これは、ちょっと危険だな。ヘタをすると一本をとられてしまうかもしれない」と、弱気になりかけた時が一瞬あった。
しかし私は、相面になった時のお相手の竹刀が、正中線からわずかにはずれていることに気づいていた。
「やっぱり、相面で仕留めよう」
そう決意した直後、石火の機に相面になった。正中線を制して「正面」をとらえたのは、私の大刀でした。
審判の旗が3本上がると同時に、ものすごい歓声が場内に響く。
ついに勝った。総合の決勝。しかも代表戦で。
観客はみんな大喜び。中でも一番喜んでいたのは、大会役員席の先生方でした。笑
懇親会
大会後の懇親会も大盛り上がり。
選手の私たちより、観ていたおじさん剣士たちが喜んでくれて、大騒ぎ。
本当にうれしかった。皆さんがこんなに応援してくれ、優勝を喜んでくれるとは思いませんでした。
部門別で3連覇して、今回は総合優勝も。
おやじ3人で勝ち取った偉業です。
こんなことが起こるんですね。剣道って本当に面白い!
リバ剣して7年目の出来事です。
追記
この懇親会で、一人だけ笑顔のない先生がいました。
この方は、市の剣連に"アンチ二刀"が3人いたうちの、最後の一人。(そのアンチっぷりはこちら)
"アンチ"だからといって笑顔がなかったわけじゃないんです。この時、仕事上の重大なトラブルを抱えていたそうで、元気がなかったのです。
この方は大会役員ですから、一応、優勝者としてお席までご挨拶にうかがった。
すると、小さな声でお礼の返事をいただきましたが、心痛な面持ちでしたね。
この2年後に、アンチ二刀ではなくなったこの方の笑顔に、出会うことになります。