「走れる」までには意外に時間がかかった
これが現実、体力が完全に戻るのはまだまだ先
病名は、急性リンパ性白血病 フィラデルフィア染色体異常。(闘病の様子はこちらから)
2017(平成29)年12月に、8カ月間にわたる抗がん剤治療を終えて退院した。(退院時の様子はこちら)
その時に、まず直面した問題が……
「うまく歩けない」
ということ。
入院中は、抗がん剤の影響で筋肉は破壊され、起き上がることもつらい状態。それでも無菌室のベッドの脇のトイレに行ければなんとかなりました。
しかし、帰宅すればそうはいきません。復職に向けて、リハビリが必要になる。まずは、歩けるようにならなくてはならない。
自分が元々どういうふうに歩いていたか、歩き方が解らなくなっちゃうんですね。筋力が落ちてまともに歩けない。体力もない。まさに"よちよち歩き"といった感じです。
退院から5カ月で復職、剣道も再開
リハビリとして散歩を日課にして5カ月。距離も最初は数十mから始めて1㎞くらいは歩けるようになった。
会社からは、「しばらくは体への負担の少ない内勤のみで」という配慮をもらって、早期に復職することができた。
同時に、大好きな剣道も再開。当然、全力ではできませんので、リハビリの延長という感じでしょうか。ごく短時間で軽い稽古だけ。それでも、稽古をすれば疲労の回復には時間がかかる。道場に行った後の3日間は体が怠い。
しかし、この頃は「もっと早く体力をつけたい」と焦るばかりでした。なにしろその1カ月後に、市民剣道大会に出場すると決めてしまっていましたから。今から考えると、無謀な決断でした。苦笑(その時出場した市民剣道大会の模様はこちら)
筋トレやランニングはできる状態ではなかった
退院して歩くことから始めれば、徐々に体力がついて、筋トレやランニングもやれるようになると思ってました。しかし実際にはできません。剣道はできるのに(自分のペースでですが)、筋トレやランニングはやろうと思っても、やはり無理なのです。
剣道は瞬間的にな動作がほとんどなので、年配になってもできる武道です。一方、筋トレやランニングとなると、そうもいきません。特にランニングは持久力の問題なので、病み上がりの身体には負荷が大きすぎる。
それにしても、走れるような気配が起こらないまま、退院して1年10カ月がすぎようとしていました。
走らなければ走れないまま
退院後に剣道を再開できた喜びで、稽古を続けてきました。しかし、最近になって自分の技量が後退していることを自覚するようになったのです。
以前と比較すれば10分の1程度の稽古量になっていますから、当然なのですが……。(大病以前の稽古メニューはこちら)
素振りや打ち込み、防具を着用しての稽古は、量は非常に少ないながらもやってます。今は取り組んでいないことと言えば基礎体力の強化、特に足腰の鍛錬です。
白血病になる前は、道場での稽古がない日は、「ナンバ走り」で一日約8㎞走ってました。(ナンバとはこちら)
それを今はまったくやっていないのです。ですから、本来の足さばきや腰の入った打突ができなくなってしまった。
技量後退の原因は解っていても、実際には走れない。走りたいけど走る力が沸き上がらないといった方が解かりやすいでしょうか。
しかし、このままでは剣道が下手になっていく一方。
「やはり走るしかない」
9月に入って涼しくなったら、ごくわずかな距離でもいいから走ってみよう。
そう決意したのは、2019(令和元)年8月のことです。
無理はしない
9月に入ると、朝夕はめっきり涼しくなって過ごしやすくなった。
仕事から帰って日没を待って走ることにした。夜に走るのは暑さ対策ももちろんですが、一番の問題は紫外線。
抗がん剤の影響で紫外線にあたると皮膚が真っ赤になって"軽いやけど"になってしまうのです。実際に、退院直後に20分ほど散歩した時、12月でしたが日光に当たった部分(顔、首、手の甲)だけが腫れ上がり、後にシミになってしまったのです。
以来、外出時にはUVローションは必携ですが、日光に当たらないことに越したことはありません。
そして、もう一つ大事なことは、絶対に無理はしないということ。
「明日もまた走りたいと思うところでやめておこう」
以前のような限界に挑戦するような走り方はせず、この日の上限は1㎞と決めた。
走り方も忘れてた、でも楽しい!
すっかり秋の空気に入れ替わったとある夜。
ランニングシューズに履き替えて、川沿いのランニングコースに出た。
「走ってみてやっぱりダメだったらどうしよう」
そんな思いが頭をよぎる。
ゆっくり走り始めてみる。走法はナンバ。片手刀法には必須の稽古。
うまく走れない。「ナンバ歩き」は普段やってても、ナンバで走るのは難しい。歩いた方が早いくらいだ。
いきなりうまく走れなくてもいい。徐々に筋力と走法を取り戻していけばいいのだから。
やはりキツイ。500mくらいでやめておこう。明日もまた走りたいと思えるように。
「今オレは、確かに走ってる」